こんにちは、JSMの中村昌雄です。
前回はマーケティング戦略の、【戦略】について解説しました。
今回はビジネスでよく使われる戦略フレームワークについて、その実践的な活用方法を解説します。
ここに挙げるものは、あなたもご存じの戦略フレームワークだとは思います。
しかしここではお勉強としてのマーケティング知識だけでなく、私の30数年のB2B経験から言える実践的な解釈や活用方法を、実例を上げながら解説していきますね。
この記事を読んでいただくことで、次のような考えを整理することができます
私は一部上場企業で30年以上にわたりB2B営業とマネジメントをしてきていまして、おかげさまで多くの成果を出し実績を積んできています。
私もこれらの戦略フレームワークは知った上で30年以上営業をしてきています。
自社はどのポジションにいるのか、この商品事業はどこにプロットされていて、どの方向に向けていけばいいのか。
そんなことをこれらフレームワークで理解しながら事業をしてきたので成果につながりました。そしてここまでやってきて、さらに分かった重要なこともあります。
そんな私なりの解釈と解説をコメントしていきますのでぜひ参考にしてみてください。
アンゾフの成長マトリクス
成長戦略と言われるもので、現在の商品・事業を今後どのように成長させていくかの方向を示した戦略マトリックスです。
「市場浸透」
いわゆる本業の強化、シェアを上げていこうという戦略です。
「新製品開発」
今のお客様に、新しい商品を売り込んでいく戦略です。
今のお客様の新たなニーズを探して、その解決にお役立ちする製品を開発して品揃えしていくことです。
これができると強いですね、どんどん事業が大きくなります。
今扱っている商品とセットで使ってもらうことで価値が増すような新製品なら、お客様も喜んでもらえますし購入単価も大きくなります。
「新市場の開拓」
今の製品を違うお客様や用途向けに売り込むことです。
B2Bの商品・サービスは結構お客様のニーズを絞って作られていることが多いので、用途が違っても役に立つ新たなお客様を見つけることはなかなか難しい感じがします。
「多角化」
お客様も商品も全く新しい事業に乗り出すことです。
バブルのころ調子に乗った企業がよく畑違いの事業に進出しては失敗していましたね、今の事業との相乗効果が出ないんです。
大企業ではコングロマリットという多角化成長戦略もあるようですが、ほとんど成功していないようです。
日立製作所も一時期多角化して経営難に陥って、大前研一さんにボロカスに言われていましたね。
日立さんは今では多角化をやめ、事業を整理してまた優良企業として復活されていますが、やはり戦略とは絞ることだと思います。
私が見てきた恐るべき成長戦略
私の会社のライバルにキーエンスという会社がありまして、ここは本当に凄く成長しましたね。
私が入社したころは弱小企業でした。就職活動しているときは2部上場前で、私でも入ろうと思えば入れた会社でした。
それが今や、同じ事業領域では業界最大手の私の会社を上回る大企業にまで成長しました。
その成長を30年間私は目の当たりにしてきました、あれよあれよという間でしたね。
https://note.com/bizual/n/n90fef4cfe778
営業力がすごくってですね、今でも恐れ入るほど営業力が強いのです。
最初の頃はその営業力でシェアを上げて成長させていました、市場浸透ですね。
けれどまだ最初の頃は、私たちは商品力で勝てたのです、競合すれば勝てました。
しかし彼らは市場浸透しながらお客様のニーズを吸い上げ、併せて新商品をどんどん投入してきました。
商品力がどんどん強くなり、今や彼らにしかないオンリーワン商品を山ほど品ぞろえしています。
同じ商品群で戦っている領域ではもう追いつけないところに成長しました、新製品開発です。
ライバルながら、恐れ入ります。
これも一朝一夕に成し遂げられたわけではなく、一つ一つの地道な積み重ねです。
これがうまく回った時に成長します。
あなたの会社もそんなICHIGAN組織を作って成長していきましょう!
競争戦略
コトラーの競争地位4類型
4つの競争ポジションで戦略を考えるマーケティングフレームワークです。
リーダー
ターゲット市場でトップシェアを誇る企業です。
取る戦略は「全方位戦略」「同化戦略」です。
全方位戦略とは、扱う商品の全てのカテゴリーで品ぞろえをする戦略です。
同化戦略とはチャレンジャーが差別化した戦略を打ち立ててきたときに、同じことをして差別化でなくしてしまうことです。
チャレンジャー
リーダーに戦いを挑んでいる二位以下の先頭集団。
リーダー企業に対して、「差別化」を仕掛けることが戦略となります。
例えば、リーダーのトヨタが品ぞろえを持っていない新たなカテゴリーに「エルグランド」という商品を投入したことが、チャレンジャーの日産がとった差別化戦略です。
そのあと数年でトヨタが「アルファード」を出して日産の差別化戦略をつぶしにかかったことが、リーダーのトヨタがとった同化戦略にあたります。
ニッチャー
小規模な隙間市場でトップを目指す企業。
ニッチャーというように、大企業が手を出してこないようなニッチ市場(小規模な隙間市場)でトップシェアを取ることが戦略です。
フォロワー
リーダーを真似しながら追いかけている企業群。
戦略はマーケティングや開発などに費用をかけないで、リーダーが出した商品を模倣することになります。
ニッチャーたれ!
私の30年以上の経験から実例をお伝えしますね。
私がいる業界ではリーダーのところにM社がいて、私の会社は2位のチャレンジャーでした。
先ほど書きましたキーエンスはニッチャーでした、当時会社は大きくなかったのですが、ある狭い領域(ニッチ)ではトップシェアをとっている存在でした。
実際にその時はチャレンジャーの私の会社は、ニッチャーのキーエンスにそれほど目くじらを立てていなかったと思います。
その時は小さい会社でしたし相手にせずに、リーダーのM社だけをライバルと見ていました。
そのキーエンスが今や売上規模もシェアも大きくなり、今や業界のリーダーになってしまいました。
また、当時はI社がフォロワーのポジションにいました。
業界の他の会社と同じカテゴリーの商品を後追いで作って、大手ライバル企業の隙間で事業をしていました。
チャレンジャーだった私の会社は、このI社もそれほど相手にしていませんでした。
それが今や安全機器のカテゴリーでは商品もサービスもNO.1の企業になって、ニッチャーの地位を確保しています。
この安全機器の領域ではニッチャーのI社に勝てなくなってしまいました
このように、今の時代は
になります。
【ニーズ】に【強み】を作って当て、ここでは負けないという場所で勝ち切るのです。
それがここで書いたマーケティングです。
あなたの会社もICHIGAN組織となってニッチ領域でリーダーとなりましょう!
次に集中戦略について書きますが、ここにつながっています。
ポーターの3つの基本戦略
マイケル・ポーターは、競争戦略の類型として以下の3つの基本戦略があるとしました。
- コストリーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
実際の競争優位性は、コストリーダーシップか、差別化か、これしかないということです。
経営資源が少ない時、狭いターゲットに対しては「コスト集中」か、「差別化集中」かの、集中による優位性を基本戦略として示しています。
しかし現在は、
「コスト集中」戦略・「差別化集中」戦略
しかありません。
ポーターものちにそのように言及して修正しています。
理由は、現在は買い手市場であり、ニーズが多様化しお客様が自ら情報を集めて選ぶ時代になったためです。
そのために売り手側も商品ごと、事業ごとにきめ細かにライバルと競争しなければいけなくなったからです。
経営資源の多い大手企業であっても、特定のターゲット、製品、流通、地域、などに集中する、集中戦略をとる必要があるということなのです。
そもそも「戦略とは集中である」「戦略とは捨てることである」と言われるように、どの戦略にも集中は必要と書いてきました。
この集中を前提に「コストリーダーシップ」と「差別化」という基本戦略があるということです。
ポーターの脅威層戦略の解説はここまでにしても、コストリーダーシップというのはほんの一部の大手企業が取れる戦略として、まああまりとれる競争戦略ではありませんね。
先ほど
であると書いたように、実際には
が大切になってきます。
です。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは、戦略コンサルティング会社で著名なボストン・コンサルティング・グループが1970年代に提唱したフレームワークです。
企業のそれぞれ独立した事業において、利益の出しやすさ、投資の必要性などの観点から余剰な経営資源を見出し、どこにどれだけ分配するかを決定するために用いられるフレームワークです。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの2つの軸から「花形」「問題児」「負け犬」「カネのなる木」の4つの象限を導き出しています。
問題児(Question Mark)
市場シェアを高めて、花型を目指す
花形(Star)
売上は大きいが競争が厳しいので利益率は悪い。
継続して投資し、市場の成長率が落ちていったときに一人勝ちの金のなる木を目指す
金のなる木(Cash Cow)
稼げるだけ稼いで利益を他の事業へと分配
負け犬(Dog)
早期に撤退の検討を
実際にはポートフォリオ経営というのは、複数の事業を行っている際に事業ミックスを最適化させるために、どこに投資するか、どの事業を撤退するかを意思決定するために使われます。
どの事業に投資するか、というのは営業組織で言うと、どの事業どの商品に営業リソースを振り向けるか、という判断になります。
一つの営業部門、一人の営業パーソンはいくつもの商品をかけ持つことが一般的ですよね。
ですので、この辺りはしっかり認識したうえで部門や自分の活動リソースを振り分けることが、戦略的であるとも言え、成果につながる重要な考え方になります。
次のプロダクトライフサイクルで、この実現のための戦略的考え方を解説します。
プロダクトライフサイクル
https://globis.jp/article/6695
ご存じだと思いますが、自社の商品・事業がライフサイクルのどの場所いるかによって、行うべき投資が決まってくる大切な理論です。
私がここで申し上げるのは
ということです。
導入期
導入期のお客様はアーリーアダプターと言われていています。
導入期と成長期の間にキャズムという谷があり、キャズムをどのように超えていくかが課題となります。
成長期に入るためにはアーリーマジョリティーというセグメントのお客様に採用を広げていただく必要があり、売り方も変えていかなければいけないということです。
成長期
成長期の課題は、シェアをとって花形になることです。
先ほど書きましたPPM(ポートフォリオマネジメント)で言うと、市場が伸びているときにシェアをとらなかったら問題児で、シェアをとれば花形というポジションになります。
落とし穴は、市場が伸びているのでシェアが低くても売上は伸びていくのです。
営業にさほど投資をしなくても売上が伸びるので利益も伸びて社内が浮かれてしまいます。
問題児に甘んじるのです。
成長期の戦略としては、
が正解になります。
そうすると花形のポジションに行けます。
ただし、先ほども書きましたが花形は競合が多いので利益はそれほど出ません。
成熟期
さて、成熟期に入ったとしましょう、今度は成長率が低下して衰退期へ向かいます。
シェアをとっていた花形は金のなる木に移ります、シェアをとっていなかった問題児は負け犬に向かいます。
衰退期
衰退期に入ったら、シェアをとっていなかった企業のこの商品・事業が負け犬となり市場から撤退していきます。
シェアをとっていた企業の一人勝ちとなり、金の生る木のポジションを得ることができます。
成長期に利益を削ってでもシェアをとっていくことが大切
この最初で私は「成長期に利益を削ってでもシェアをとっていくことが大切」と申しました。
30年の実例からいえることです、私が目の当たりにしてきたからです。
私が1990年に入社した時に営業配属された商品事業が、当時成長期の真ん中くらいだったのです。
数年前から成長と利益がものすごく伸びているので、社内では花形の事業のように扱われていましたね。実際には問題児に向かうのですが💦
作れば売れるという状況でしたので、どんどん新しい製品を発売しては売上を伸ばしていました。
けれど一方で作り手の理屈で新商品を開発して、お客様の使い勝手をないがしろにしてしまったところがあったのです。
良い新商品を発売して高単価で販売するなど、価格統制も効いてしっかり事業をしていたのだとも思います。
けれども一方でお客様からの値引きに応じない姿勢はお客様からは傲慢に映ったかもしれません。
その数年前には私の会社が市場シェアの50%をとっていました、導入期はトップシェアでした。
私が入社した成長期には30%のシェアがあり、ライバルのM社も30%のシェアで、私の会社と2社でシェアの60%を占めていました。
その他にもシェアが数%のメーカーが3社ほどありましたが、それらは負け犬としてその後生産中止してこの事業から撤退していきます。
さてライバルのM社ですが、そんなに積極的に事業をしていたわけではなかったんです。
新商品も私たちの会社ほど出ていませんでした。
皮肉なことに、このことが、お客様からするとM社は使い勝手が変わらないということで評価されたのです。
新商品を買わされるたびに使い勝手が変わる私の会社は、お客様から嫌がられM社に移っていきました。
またM社は代理店、2次店と販売ルートが何層にもなっていて統制が取れていないようでした。
M社も安く売りたかったわけではないのでしょうが、M社の販売店同士が競合するので結果的に市場に値崩れを起こして安売りの状態になっていました。
M社は使い勝手が変わらない、しかも安い。
この状態でバブルが崩壊して成熟期、低成長の時代に突入したのです。
現在M社のシェアは50%、私の会社のシェアは20%です。
後からそういうことだったのか、というのが分かります、成長期にシェアをとることが大切、後々儲けさせてくれるという大局をもって事業や営業に投資することが大切です。
延命策
じゃあ衰退期に入れば2位以降は市場から出ていかなければいけないのか、ということですが、延命策があります。
延命策はたくさんあります、製品のデザインや機能の改良、新しい用途の開発、新市場の開拓などです。
私の会社もシェア20%ですが未だ市場に残って事業をしています。
『カテゴリーをずらす』戦略をとっています。
新しく出した商品で画期的に差別化し、今までシェア争いをしていた商品とは商品カテゴリーが違うんすよ、と言って競争の軸をずらそうとしています。
新しいプロダクトライフサイクルを作り、その導入期の位置づけでプロモーションをしています。
私はそのことでここ近年、M社を大きく切り替えた実績を持っています!
それはまた4章の「採用せざるを得ない提案」のところで書いていきますね。
それでは今日のまとめです
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
あなたのような会社にB2B営業を支援する仕事をさせていただいています。
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