キーエンス流を真似た会社が陥る「営業崩壊」の罠|営業組織を壊さない構造改革

0.営業の理解

※この記事は「キーエンスの営業はなぜ再現できないのか」の続編です。

キーエンス流の営業手法を真似しても、なぜ多くの企業では成果が出ないのか。
営業組織の構造が違うまま手法だけを導入すると、現場は疲弊し、営業崩壊を招きます。
では、一般企業はどう戦うべきなのか。
今回は、営業組織を壊さず成果を出すための具体的な構造改革について解説します。

前回、キーエンス流が一般企業では再現不可能な理由をお伝えしました。

非常に多くの反響をいただきましたが、経営者の皆様が一番知りたいのは
『じゃあ、うちはどう戦えばいいんだ?』

ということではないでしょうか。
今回は、その具体的な処方箋をお話しします。

「営業力を強化するために、キーエンスの管理手法を導入した。しかし、期待に反して現場の士気が下がり、離職者が増えてしまった……」

キーエンスの営業は、間違いなく強い。成果も出している。

だからこそ、多くの企業がこう考えます。

「キーエンスの営業を参考にすれば、自社の営業力も上がるのではないか」
「行動量管理やKPIを徹底すれば、成果は出るのではないか」

その発想自体は、自然です。私自身、営業現場にいた頃、何度もそう考えました。

しかし現実には、キーエンス流を導入しようとして、うまくいかなかった企業の方が圧倒的に多い。

私の元には、そんな切実なご相談が後を絶ちません。なぜ、世界最高峰の成功モデルを真似ているはずなのに、裏目に出てしまうのでしょうか。

それは、キーエンスという組織が「極めて特殊な土台」の上に設計されているからです。今回は、一般企業が彼らのやり方をそのまま導入した際に直面する、回避不能な3つのリスクについてお話しします。

営業マンは、最初からその覚悟で入社していない

まず、最も大きな違いがあります。
それは、営業マン本人の前提です。

キーエンスの営業マンは、最初から「成果が出なければ生き残れない」世界に入る覚悟を持って入社しています。

・成果主義
・厳格な評価
・数字が出なければ居場所がなくなる
・代わりはいくらでもいる

その環境を理解したうえで、高い報酬と引き換えに、その世界を選んでいる。

一方、多くの一般企業の営業マンはどうでしょうか。

最初から、「毎日KPIで詰められ、成果が出なければ切られる」
そんな前提で入社している人は、ほとんどいません。

・成長したい
・成果を出したい
・評価されたい
・家族を支えたい
・長く働きたい

不安や迷いを抱えながらも、懸命に営業に向き合っているのが、普通の営業マンです。

この出発点の違いを無視したまま、「キーエンス流でやれ」と言ってもうまくいくはずがありません。

高額報酬だけで、ロイヤリティは成り立たない時代

よく言われます。

「キーエンスは高い報酬を払っているから、営業マンが頑張るのだ」

確かに、それは一面の事実です。
しかし、今の時代、それだけでは続きません。

営業マンが長く力を発揮するためには、

・成長実感
・評価の納得感
・役割の意味づけ
・組織からの信頼
・働く理由への共感

こうした要素が不可欠です。
今で言うエンゲージメントです。

高額な報酬で一時的に引き留めることはできても、
それだけで人が持続的に力を出し続けることは難しい。

多くの企業が、
「成果主義を導入したが、営業が疲弊した」
「数字だけが残り、人が育たなかった」
という結果に終わる理由は、ここにあります。

キーエンスは「人を信用しない」前提で設計されている

あまり語られませんが、ここは非常に重要なポイントです。

キーエンスの営業は、個人の善意や裁量を前提にしていません。

・どれだけ行動したか
・何を話したか
・どんな提案をしたか
・それは本当か

すべてが管理され、確認され、場合によっては「疑われる」前提で設計されています。

実際には、「本当にお客様を訪問し、そんな説明をしたのか」を顧客に確認することさえある。

このレベルの管理・統制・覚悟が、果たして自社にあるでしょうか。

営業マン数人を集めて、「今日からキーエンス流でいこう」、そう言って導入できるものではありません。

そもそも、キーエンスに入社できる人材のレベルが違う

もう一つ、見落としてはいけない前提があります。
それは、キーエンスに入社できる人材そのもののレベルです。

私がオムロンに入社した1990年当時、正直に言えば、大学を出ていれば、キーエンスには比較的多くの人が入社できました。

当時は、オムロン、NEC、松下電器、ソニーといった企業に入れなかった人たちが、キーエンスを選ぶ、そんな時代でもありました。

しかし、今は完全に逆転しています。

現在のキーエンスは、高学歴であることはもはや前提条件であり、それでも入社試験に合格することは簡単ではありません。

実際、キーエンスに入社できなかった人材が、オムロンに入社してくる、そんな時代になっています。

この事実が意味することは、非常に重い。

そもそも、どんな営業マンでも鍛えれば、キーエンスのような営業パフォーマンスを発揮できる、という考え方自体が、現実的ではないのです。

キーエンスの営業は、最初から選抜された、極めて優秀な人材を前提に設計されています。
だからこそ、あの営業スタイルが成立している。

さらに言えば、キーエンスの強さは営業マン個人だけではありません。

入社後の教育レベルも、極めて高い。
営業としての思考、行動、判断基準が、徹底的に鍛え込まれる仕組みが、会社として用意されています。

このような人材選抜と教育風土を持たない企業が、
「キーエンス出身のコンサルタントに頼めば」
「研修を受けさせれば」
キーエンスのような営業マンが生まれるかといえば、それはあまりにも無理があります。

営業マンだけを切り出して鍛えても、企業としての前提条件が違う以上、同じ結果が出るはずがないのです。

「やり方」だけを切り取ることの危うさ

多くの企業が失敗する理由は、ここにあります。

・KPIだけを導入する
・行動量だけを増やす
・管理だけを厳しくする

しかし、

・採用の思想
・評価制度
・育成方針
・組織文化
・経営の覚悟

こうした土台が伴っていない。

結果として起きるのは、

・数字合わせ
・無意味な訪問
・顧客軽視
・現場の疲弊
・離職

「営業力を高めるつもりが、営業を壊してしまった」

そんな現場を、私は何度も見てきました。

では、普通の企業はどうすればいいのか

ここまで読むと、こう思われるかもしれません。

「では、普通の企業はどうすればいいのか」
「キーエンスに対抗する術はないのか」

あります。
ただし、それは、キーエンスの営業を真似ることではありません。

次回は、

・なぜ普通の営業マンでも成果を出せるのか
・営業マンを“追い込む”のではなく“支える”とはどういうことか
・個人ではなく、組織として営業するとは何か

その考え方を、もう一段深く掘り下げていきます。

営業を「個人技」から解放するために、何が必要なのか。

「普通の営業マンが成果を出すために、組織が果たすべき役割」について、お話しします。

形だけを真似ることは、自社の優秀な営業マンを失うリスクを孕んでいます。そうなる前に、まずは自社の『守り』を固めることから始めてみませんか?

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左:従来の営業……個人の根性と能力に頼る「孤独」な戦い。
右:JSM流の組織戦……会社が「戦略・武器・支援」という盾(シールド)になり、チームで勝つ陣形。
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